中国の奥地、チベット自治区にある小さな集落「加達村」(かたつむら)。
空気が薄く、赤茶けた山と泥の川にはさまれ、畑にも牧畜にも適さない土地に、
自然は特別の恵みを与えました。塩です。
なぜ、こんな山奥で塩がとれるのでしょうか。
そのルーツは、4000万年前にさかのぼります。
インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突し、海底が隆起したとき、
海の塩は岩塩層として大地に閉じこめられたのです。
チベットには多くの岩塩層が確認されています。
しかし、唯一加達村だけが地中深くに眠る塩を採取することができたのは、
川が流れているからでした。
長い年月をかけて地面を削った川は、やがて岩塩層を溶かします。
塩をふくんだ水は、やがて地表に湧き出し、塩の井戸になったのです。
自然が与えた奇跡の恵み。
天空の村の住人は時代に寄り添いながら、この「赤い塩」を守る努力を始めました。
■語り 緒形 拳
■演出 奥村健太