【メディア・ワン 代表インタビュー】
趣味は散歩や料理など、「時間がかかること」。
理由は「企画やナレーションを考えながらできるから」という、趣味=仕事、根っからの「映像人」である弊社代表・奥村健太に、若手社員(高橋美波・2020年入社。通称:たかみな)がインタビュー!
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株式会社メディア・ワン 代表取締役
プロデューサー/ディレクター
奥村健太 (おくむら・けんた)47歳 最近、会社近くの蕎麦屋「手打蕎麦 ごとう」でお酒が飲めなくなって、傷心気味…。
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※今回は前編、中編、後編の三部作の【中編】です。
Q:遺族取材のように、ニュースの現場は人の不幸と切り離せませんが、一方で面白いなとか、興味深いな、と思った経験はあったんですか?
A:一番大変だったんだけど、興味深かったのは「オウム真理教」関連取材かな。その頃はもう麻原彰晃(本名:松本 智津夫・2018年死刑執行)は逮捕されていたんだけど、まだ残党というか、彼を信奉する人たちがいたわけよ。秋葉原でパソコンショップやっているとか。娘を崇める勢力がいたりとか。長男を後継者にしようとか、改組された「アレフ」とか。
信徒の中でも犯罪に関わっていなかったはずの人に「その後、どうですか」って取材して、現状はどうなっているのか探してって。当時はネットも今ほど発達していないから、自分の足で聞いて回る「探偵風」なところも含めて、ちゃんと取材してるなって感じがあって、面白かった。取材内容は「興味深く」はあったけど、「面白い」というものとは、真逆なものだけど。
Q:オウム関連の取材中で印象に残ったことは?
A:「なんであの宗教にどっぷりハマっていたのか」って聞いたときに、“現状に不満がある”という答えが一番多かったんだよね。「今の自分は本当の自分じゃない」、みたいな。今で言うところの「なろう小説」の良くない方向版。「俺が本気を出したら、こんなもんじゃない!」という人々の「はしり」だったんじゃないかな。時代の徒花というか。高学歴の信徒が多かったのも、現実社会で認められない鬱憤を晴らしたかったというか…。
オウム真理教の教えを守ってさえいれば本当の自分になれると。だから修行内容も含めて、傍から見れば、めちゃくちゃなことをしてたっていうのが「生の言葉」として知れたのは、面白かったかな。「この人たち何を考えて活動しているの?」っていうのが、当時の俺の取材の動機で、それを聞いて報道するってことを、毎日毎日一生懸命にやっていた。
Q:ここまでの話だけでも色んな現場を取材されたのがわかりますが、中でも忘れられない現場はなんですか?
A:やっぱり地震だね。スマトラ島沖地震と新潟の中越地震と東日本大震災と、10年くらいの間に3箇所も行ってる。スマトラ島沖地震は、起きたその日の夜に成田空港を出発して、タイに向かっていたかな。
(※震災発生直後に宮城・石巻市を取材する奥村代表)
Q:前の2つの被災地取材が東日本大震災の取材に活きたことってありますか?
A:まず自分が悲しんではいけない。それと被災者=悲しんでいる人に同化してはいけない、ってことを覚えた。心を鬼にしてじゃないけど、「自分は何のためにここにいるんだ!」ってことを、ちゃんと考えてから現場に入らないと、何の仕事もできないっていうのを痛感した。簡単に言えば、取材者が悲しんではいけないってこと。
Q:同化してはいけないというのは?
A:やっぱり「かわいそうだから撮るのをやめよう」って思っちゃいけないのよ。それは中立ではない。人間だから、そう感じたり、思うのも分かるのよ。泣いているから話を聞きづらいな…とかさ。でも「同じことを二度と起こさないようにここにいる」「同じような被害を起こさないように」「今、現場で必要とされているものは何か伝えたい」って思わないと、取材そのものがやってられないから。これが同化してはいけないってこと。やめとこうって判断したらその部分は報道されないからね。
Q:無かったことになってしまうと。
A:そう。結局ドキュメンタリーでもそうなんだけど、記録するってことが俺たちの仕事だから。でも東日本大震災は今までをはるかに超えるインパクトで、発生当初は被害の様子しか報道してなかったから、なんだかな、と思って…。そこで一段落したあとの特番では「今あなたが欲しいものは何ですか?」って答えてもらうVTRを作った。フライパンが欲しいですとか、ゲートボールのセットが欲しいです、とかね。テレビの力を使って支援物資を送ってもらおうって試み。放送後、本当にゲートボールセットが届いたから「テレビはすげぇな」って改めて思ったね。
(※震災直後の宮城・石巻市の様子)
Q:報道の現場を離れた今は、ニュースを見ながら何を考えていますか?
A:最近はもっぱらコロナかな、朝から晩までだからね。
コロナの今の状況とかワクチンの状況が、政治家のパフォーマンスや派閥争いの武器になっているのが辛いなって思う、正直に。…だけど、そういう風な見方で報道する番組がほとんどないじゃん。たんに「感染者が先週から比べて何人増えた!」とか煽ってるだけで。ネットで何でもかんでも一次情報に接することができて、分かってしまう時代に、ニュースをキュレーションする人間が、ちゃんと、しっかり「ニュース」を解説する番組があるといいのにねって思うんだけど、全然ないよね。
Q:特に政治に関しては、難しいと感じる視聴者が多い中で、オンエアで尺を割いてもやっぱり「わからない」って視聴率が落ちてしまいがちで。でも伝えないことには日本の政治を知ってもらえないし、っていうジレンマがありますよね。
A:数字が取れないから、やらないんだよ。結局、日本のニュースって政治は「政局」しかやらないから。1vs1の構図を作って面白がって…。そのツケが来てるんだと思うよ。政治の難しい話を、どうやって面白く見せるかって工夫したりとか、それで観る人を育てるたりすることも、本来テレビの仕事だからね。
(後編に続く)