【メディア・ワン 代表インタビュー】
趣味は散歩や料理など、「時間がかかること」。
理由は「企画やナレーションを考えながらできるから」という、趣味=仕事、根っからの「映像人」である弊社代表・奥村健太に、若手社員(高橋美波・2020年入社。通称:たかみな)がインタビュー!
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株式会社メディア・ワン 代表取締役
プロデューサー/ディレクター
奥村健太 (おくむら・けんた)47歳 最近、会社近くの大勝軒・代々木上原店が休業して大ショック
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※今回は前編、中編、後編の三部作の【前編】です。
Qよろしくお願いします。私は今、フジテレビの報道局で働いているのですが、奥村さんもADの頃は報道番組でも働いていたんですよね?
A:そう、関口宏のサンデーモーニング。TBSにいました。1997年。そこで出会ったのが凄い人で。TBSのプロデューサーで編成局長までやった吉﨑隆って人がいるんだけど、その人にテレビのイロハを教え込まれた。ホントにペーペーの頃からずっとかわいがってくれて。今の俺があるのは彼のおかげ。バブル期の天才プロデューサーで、「テレビとは」みたいな向き合い方がすごかった。それで最初に踏んだデカい事件は和歌山のカレー事件。当時、疑惑の渦中にいた女性がマスコミに向かってホースで水をかけてる映像がたまに流れるんだけど、その中に俺もいるんだよね。
Qそうだったんですね。社会系の、事件や事故の現場が多かったんですか?
A:そうそう、いいからすぐ行け!ってね。日本全国あちこち行っていて。
Q一般の人と接するわけじゃないですか。カメラに慣れていない人に話を聞く中で気をつけたり学んだりしたことってあるんですか?
A:取材でニュースの現場で色んな人に会って、知ったのは「性格は顔に出る」とか。数限りない人に取材して思ったのはコレ。
Qしぐさに出るっていうのは
A:貧乏ゆすりとかね。
Q顔を映せないインタビューで手元とか撮りますもんね。
A:そう。やっぱり色んな人に会って話を聞いていると「あ、嘘ついてるな」とかわかるようになるし。こういう所に注目するようになったね。よく目元を撮ったりするじゃん。「キョドってる」とかそういうのも含めて…。ドキュメンタリーもそうなんだけど、人間を見るときはこういう所を見る…っていうのが何となく色んな人を取材して、被害者も加害者も取材して得た真理だね。人間研究にもなりました。
A:そのうち「たかみな」も行くと思うけど、一般の人だと遺族取材が本当に辛かった。
黒磯の事件なんだけど、女性の中学生教師が生徒に刺されて殺されるわけ、バタフライナイフで。生まれたばかりの赤ちゃんがいる遺族の旦那さんを相手に「いいからコメント撮ってこい」って言われて行ってピンポン押すとさ、赤ちゃんが泣くんだよ。その時に旦那さんに「勘弁してください、そっとしておいてください」って言われたんだけど、こっちは先輩ディレクターに撮ってこいって言われているからとりあえず「今のお気持ちは?」みたいな。今、考えたら完全に馬鹿みたいだけど。それで相当、旦那さんに泣かれて怒られて。当たり前だよね。…で、帰りの車中に落ち込んでいたらカメラマンに「そういうこともあるけど、同じような悲劇が起きないように声を伝えていくのもお前らの仕事だ」って言われて救われた気がした。帰ってきて先輩ディレクターからは「こんなつまんないコメントを撮ってくるな」って怒られるんだけど。
Q今だとこういった話題はSNSに取り上げられて「マスゴミ」と言われるじゃないですか。
A:さっきの和歌山のカレー事件でも被害者の取材をしていて、事件後も「あれから半年、○日」ってずっと各局揃って押しかけていたんだよね。被害者の自宅にズカズカ行って、でも事件から半年であろうが一年であろうが、それは単なるマスコミの勝手じゃん。遺族にとっては昨日も今日も明日もずっと被害者でいつづけるわけで。マスコミの勝手な理屈で「あれからどうだ」って押しかけるのはどうなんだろうって思ってたのよ、それは被害者遺族からも言われてたし。
けど、彼ら彼女らは「事件が風化してほしくない」とも言ってたの。真相を知りたいって声がある中で、マスコミが報道しなくなると忘れ去られていく。「殺された自分の家族のことも忘れ去られていくってことが怖い」って気持ちに寄り添って、乗っかってくしかないわけ、こっちはね。そう考えながら取材交渉していく自分に「俺…いま嫌なやつになってんな…」って思ったりもした。反省したんだよね、そのとき。でも上からは、やれって言われるから。視聴者もそれを求めてる。けっきょく数字が取れるからやるんだけど、数字なんてどうでもいいよねって思い始めるのは、その後しばらく経ってからなんだよな。
俺はそういう自問自答する期間って結構あったんだけど、今ってそういう教育もされてなければ何も考えてない、現場の経験の浅い人がいきなり取材に行かせられるの。制作の現場が急速に劣化してるってことだよね。番組の予算が下がっていくから、ディレクターにADが付いていって勉強もできないし。現場を踏ませるってことをしないまま、いきなり放り出しても良いものが撮れるワケないよね。そこ含めて、「取材する側の質が落ちてる」ってことが「マスゴミと言われる所以」になってんだろうなって気はする。
うちの会社で言うと、制作費を多少圧迫してもADをなるべく現場に連れてってディレクターの背中を見せるようにしている。でも、ちょっとなかなか今ね…コロナで難しいところはあるんだけど。それでディレクターが困っていたりとか、苦悩するって見せておかないと。いつまでたっても同じことの繰り返しだなって思う。(中編に続く)